海外でのみ販売されていた国産メーカーの小排気量モデルを輸入した立役者である矢代富治雄（現 株式会社バイク館イエローハット 参与）にその歴史を語ってもらいました。連載の最終回となる今回は、昨今の輸入車を取り巻く環境と今後の話。
取材：伊井覚（ANIMALHOUSE）、写真：尾崎写真事務所
バイク館では中国、タイ、ベトナム、インドネシア、インドから日本メーカーが海外向けにラインナップしている小排気量モデルを輸入し、販売しています。かつては125ccモデルが主流だったアジアですが、今は155cc、190ccモデルが人気を博しています。
さらに近年では日本メーカーが国内向けの125ccスポーツモデルを充実させており、わざわざアジアから輸入するメリットが少なくなってきたこともあり、バイク館でも155cc、190ccモデルの輸入に乗り出しています。
「125ccがやっぱり一番の売れ線なんですけど、今は日本のメーカーがこの市場に気づいて125ccのスポーツバイクが日本に溢れてしまっているんです。そうしたら、去年タイ・ヤマハから入れていたXSR155が大ヒットしたんですよ。
元々国内でも大型モデルが販売されているブランドなので、受け入れられやすかったのかもしれませんね。それで原付2種じゃなくても売れることに気がついたんです。ところがこのXSR155はABSがついていなくて、去年の10月に日本の法律が改正されて、登録できなくなってしまったんです」（矢代）
155cc、190ccに新たな可能性を見出した矢代は現在、インドのマーケットに注目していると言います。インドの人口は約14億人、今世界で最も急速に経済成長を遂げている国の一つです。年間のバイク売上台数は2000万台を超え、世界のバイク販売台数の1/3をインドが占めています。中でも注目のメーカーはインドでシェアナンバーワンを誇るHERO（ヒーロー）。
「HEROは元々インド・ホンダをやっていた会社が契約期間を終え、分裂して誕生したメーカーなんです。だから実質、ホンダクオリティと言ってもいい。そこから入れているのが200ccのアドベンチャーモデル、X-PULSEです。他にもインド・ホンダのクロスオーバーモデルCB200Xもあります。インドのバイクは全てヨーロッパと同じ排気ガス規制EURO6をクリアしています。
日本の免許制度からすると、少し中途半端な排気量に感じてしまうかも知れませんが、今後はこの排気量のモデルを積極的に入れていき、新しいブームを作っていきたいんです。とはいえ、まずは乗ってみてもらわないと良さが伝わりませんから、今はバイク館の店頭に試乗車を用意して、皆さんに試乗してもらえる環境を整備しています」（矢代）
そしてもちろんバイク館では、これらの輸入バイクを販売して終わりではありません。ユーザーが輸入車を購入するにあたって、最も心配なのはアフターフォローです。そんな不安を少しでも解消するため、バイク館では2年間の保証サービスをつけ、全国の店舗で同様のサービスを受けられる体制を築いています。さらに純正パーツの供給体制にも力を入れているのです。
「バイク館では新車・中古車に関わらず、ご購入いただいた車両には2年保証がついています。さらに埼玉県川越市にあるL&I輸入新車流通センターには輸入車のパーツを1800点ほど在庫しています。
パーツ一個のために海外からコンテナが届くのをお待たせするようなことはなく、国内どこへでも速やかに配送できる体制を整えていますので、安心して乗っていただけます」（矢代）
L&Iセンター
L&Iセンター：パーツ在庫倉庫
バイク館で購入したバイクは、全国62店舗（2022年11月現在）のバイク館ならどこでも同じように修理やメンテナンスを受けられます。ツーリング先での急なトラブルにも対応することができるのは、全国チェーン展開の強みと言えるでしょう。
さらにバイク館オリジナルブランドにてローダウンキットやリアキャリアなどのカスタムパーツの製作・販売も行っています。アジアではバイクが車に代わる移動手段として主に使われており、後ろに人を載せることが多いため、リアキャリアが装着されていないモデルが多いのです。「それならば自社で作ってしまえ」というのが、矢代が出した答えでした。
こうしてバイク館は、中国やインドとの間に独自のパイプを作り、かつて125ccモデルが手薄だった日本に125ccモデルの魅力を再発見してもらうことに成功したのです。
今後もバイク館はたくさんのお客様に、国内にはない魅力的なモデルをお届けしていきます。そしてご購入いただいたバイクに、長く安心して乗っていただけるようにサポート体制もさらに充実させていきます。
