オフロードバイクが大好きな編集者・伊井覚がHeroのX-PULSE200 4Vでオフロードレースに参戦してしまう連載企画の第一弾。今回はまずレース準備編。X-PULSE200 4Vを丸裸にしてオフロードレースで戦える仕様にしていきますよ。
こんにちは。バイク館WEB記事制作を担当している伊井です!
先日バイク館の主催する試乗会でインドのHero X-PULSE200 4Vに試乗してみたところ、とても高いオフロード走行のポテンシャルを感じました。そこで「このバイクはタイヤだけ変えればそのままレースに出られると思いますよ」と調子に乗って褒めてみたら「えっ本当ですか。じゃあ出てみてくださいよ」と……。
え? マジですか?
「じゃあ出てみていいですか!? せっかく出るなら本気で表彰台を狙いましょう!」と言ってしまいました。
出場するレースはWEX EAST開幕戦、オフロードヴィレッジに決定。WEXはウィークエンドクロスカントリーの略称で、全日本クロスカントリー選手権JNCCの入門的な立ち位置のレースです。この大会は埼玉県川越市にあるモトクロスコースを使った耐久クロスカントリーになります。出場するクラスは「テーピング50」。CRF250Lやセロー250など、ナンバー付きのトレールバイクだけのクラスで、レース時間は50分です。
連載の第一回目となる今回は、X-PULSE200 4Vでオフロードレースに出る際にやるべきことや注意点などをまとめて紹介していきたいと思います。
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万円まずレースのレギュレーションを調べて、トレールバイクで出るために決められている事項をクリアします。調べてみるとWEXで最低限やらなくてはいけないことは
・ナンバープレートの取り外し
・バックミラーの取り外し
・ヘッドライトなど灯火類へのテーピング
・JNCC公認タイヤへの換装
・ゼッケンの貼り付け
の5点でした。
他にもレバーの先端がボール形状、フットレストが可倒式、サイドスタンドのメンテナンスなどありましたが、X-PULSE200 4Vは最初からクリアしている項目でした。
まずはナンバープレートを取り外し。実はこのX-PULSE200 4V、まだナンバーを取得していないので、取り外すまでもなく最初からついていませんでした。
そこで、せっかくなので、この大きなリアフェンダーを取り外せるかチャレンジしてみることにしました。理由としては、レースではジャンプの着地などで通常想定されている以上にリアサスが大きく沈み込むことがあり、リアフェンダーも大きくしなるため、その時にタイヤに干渉する可能性があることと、重いこと。
シートと両サイドに装着されていた小さいカウルを外すと、奥にいくつかボルトが見えます。これを外していきます。すると意外と簡単にリアフェンダーが外れたのですが、中にはウィンカーとナンバー灯の配線があります。
見るとしっかり色分けされていて、配線を外しても間違えずに元通りに戻すことができそうでした。でも念のために写真に撮って最初の状態がわかるようにしていきます。ここからウィンカーとナンバー灯に繋がる配線のギボシとカプラーだけを抜きます。
剥き出しになった配線がそのままだと雨などで濡れた時にトラブルの原因になりますので、ビニールテープで覆って保護しておきます。
さらにリアキャリアもボルト4本で外れましたので、リアフェンダーまわりがとてもスッキリしました。
次に左右ミラーの取り外し。ついでにフロントシールドも外しておきます。レースだと前を走るバイクのタイヤが土を後方に飛ばしますので、それに石が混じっていたりすると割れたりして危険なのです。
フロント周りもスッキリ。本当はメーターとヘッドライトも外して軽量化したかったのですが、ちょっと触ってみたところ、簡単に外れそうもなかったので諦めました。
このようにヘッドライト、ウィンカー、テールランプにテーピングを施します。これはレース中に転倒などで灯火類が割れてしまった時に破片が飛散しないための予防策です。トレールマシンで走るクラスが「テーピングクラス」と呼ばれているのは、ここからきているのです。
次にタンデムステップを外します。これはもうボルト2本を外すだけで簡単。外す理由はもちろん、レースで二人乗りはしませんし、少しでも軽量化したいからです。
同じ理由でサリーガード(インドの女性が着る民族衣装の裾をタイヤやチェーンに巻き込まないためのガード)も外します。
次にステップ。スタンダードではステップにラバーが被さっており、靴のソールを傷つけないようになっているのですが、オフロードレースではこの上に土や泥がつくと滑りやすくなってしまいます。
対策はラバーを外すだけ。ラバーはボルトも何もなく、ただ乗っかっているだけなので、手で簡単に外すことができます。
贅沢を言うとワイドステップと言って、ステップの幅が広い社外パーツに交換すると、ステップに体重が乗せやすくなるのですが、今回は「タイヤを変えるだけ」と言った手前、純正ステップで挑みます。
今回取り外した保安部品はこちら。これだけで10kgくらい軽量化できたのではないでしょうか。
レースが終わった後に外したパーツを正しく元に戻すため、ボルト類をビニール袋などにまとめてパーツごとに添付しておきましょう。
かなり重いエンジンガード。これはコーナーで足を前に出した時に少し邪魔になってしまうし、外せばかなり軽量になるのですが、万が一転倒した時にオイルクーラーが壊れてしまうリスクが高まるので、残しておくことにしました。
エンジンガードもアルミ製でめちゃくちゃ重いです。ですが、こちらもかなり安心感があるので残します。実は今回出場するレースには丸太や岩を乗り越えるシーンもあるので、とても大切なガード部品です。
ハンドガードは簡易的なものですが、最初から付いています。これも前を走るバイクから飛んでくる石などを防いでくれるため、残します。なお、上位レースのJNCCではハンドガードの装着が義務化されています。
欲を言えばグリップとレバーを交換したかったですね。純正のグリップはツーリング用の硬いゴムのものですが、オフロードレースではもっと柔らかくて手に優しいものが理想とされています。また、純正レバーも転倒時に折れるリスクが高いので、可倒式の折れにくいものに交換できたらベターでした。
最後にサイドスタンド。レース中に何かのはずみでサイドスタンドが立ってしまうことがあり、大変危険です。ですが、これを外してしまうとバイクが自立しないため、レース直前にゴムバンドで固定することにしました。
ではいよいよタイヤです。
X-PULSE200 4Vの純正タイヤはこちら。元々ブロックタイヤなので、林道ならそこそこちゃんと走れます。でも今回走るのはクロスカントリーレースで、コース上には丸太や岩もあるし、サンド路面もあります。
なお、JNCCではレギュレーションで公認タイヤ制度をとっているので、主催者が認めたタイヤを履かないと走ることができません。
タイヤを外すときはモトクロスバイクなどのエンジン下に差し込むメンテナンススタンドを使うのですが、X-PULSE200 4Vは車両重量が158kgと重く、最低地上高も220mmと決して高くありません。そこで車用のジャッキをスイングアームに当ててリアタイヤを浮かせることにしました。
リヤホイールを外してみると、中にはしっかりハブダンパーが入っていました! アクセルを開けた時にチェーンやスプロケットに急に負担がかからないようにするための緩衝材的なものですが、これがオフロード走行の際にアクセルの開け始めの絶妙なトルクコントロールに役立つのです。
一般的なチューブが入っているオフロードタイヤなので、タイヤレバーがあれば簡単にタイヤ交換ができちゃいます。細かいやり方は長くなってしまうのでここでは省きます。
と、ここでちょっと工作。リアタイヤを外したら、リムにドリルで穴を開けちゃいました。新車をいきなり傷モノに……。
こんな感じ。大きさはチューブのエアバルブが通る穴と同じくらいですね。
何かというと、これを入れるための穴です。これはビードストッパーと言って、低い空気圧で走ってもビードが落ちないように押さえつけてくれるパーツなんです。林道でもタイヤのグリップを確保するために空気圧を落とすのは一般的ですが、オフロードレースではさらに低く、時には0.5kgf以下にすることもあるのです。用意したものはプラスチック製で軽量のMotion Pro製。
さてリアタイヤにはこのセットを組み込んでいきます。タイヤはIRCのJX8 GEKKOTA。ハードエンデューロレースでも使われる柔らかいコンパウンドのタイヤをベースに、サイドウォールの剛性を増してスピード系にも対応できるようになったタイヤです。ちなみに公道走行不可。レース専用タイヤです。チューブもせっかくなのでパンクしにくいスーパーヘビーチューブを入れて、空気圧は0.4kgfまで落として使いたいと思います。
ホイールを組み込む際はアクスルシャフトをグリスアップ。ホイールが回転する際の潤滑剤になるのはもちろんのこと、ホイールの付け根から砂が入り込んでしまうとホイールが回転する際の抵抗になってしまうので、グリスをたっぷり塗って砂が入りにくいようにしておくことが大切です。
同じようにフロントタイヤも交換します。フロントはリアと違ってインナーフェンダーがついていて、ブロックの高いタイヤだと干渉してしまいそうでした。と言って、インナーフェンダーを取り外してしまうと、フロントフォークの捻れ剛性が下がりそうだったので、インナーフェンダーを残しても大丈夫なように、ブロックのあまり高くないIRCのGX20を選びました。
フロント
リア
前後タイヤ交換完了です!
見るからに土を噛んで前に進んで行きそうなタイヤですね。万が一雨が降ってコースが泥だらけになるとブロックの間に泥が詰まってしまって、前に進まなくなってしまうため、ブロックの高さと間隔の広さがとても重要です。
最後に、念の為エンジンオイルも交換しておきます。レースでは高回転域を使い続けるため、高品質のレース用エンジンオイルを使います。今回はHirokoのFactory MX PRO 10W-40を使用しました。とはいえ、よっぽどスピードが出せるライダーじゃない限り、普通のオイルでも問題ないと思います。
ちなみにX-PULSE200 4Vのエンジンオイル容量は1.2L。油冷エンジンでオイルクーラーもついているので、少し多めですね。
これでクロスカントリーレースWEX EAST テーピング50クラスを戦います!
次回はレース当日編をお送りいたします。
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